健康長寿の鍵 ~乳酸菌発酵液~
バイオジェニックス健康法
東京大學名誉教授 光岡知足

乳酸菌発酵液によるバイオジェニックス健康法

乳酸菌発酵液の作用機構

 乳酸菌生産物質は大豆をベースに黒糖などを加えた培地に、複数の乳酸菌を接種し、長時間発酵した後、濃縮して作られます。大豆は良質のタンパク質であるばかりでなく、骨粗鬆症や前立腺がんを予防するイソフラボンという機能性成分を含み、黒糖には神経細胞に働くカリウムを多く含んでいます。このような培地を用いて乳酸菌を長時間培養した乳酸菌発酵液は優れた働きをもった機能性食品です。
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図7
機能性食品は、その作用機構からみますと、プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックスに分けられます。(図7)
 ビフィズス菌を含む乳酸菌やヨーグルトは、一種のプロバイオティクスであり、「腸内細菌のバランスを改善することによって生体調節機能を発揮する生菌」です。オリゴ糖はプレバイオティクスの一種で、「大腸内に棲みついている善玉菌だけの増殖を促進したり、あるいは、悪玉菌の増殖を抑制し、その結果、腸内浄化作用によって生体調節機能を発揮する難消化性食品成分」です。次にバイオジェニックスは、「直接、あるいは腸内フローラを介して免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用などの生体調節機能を発揮する食品成分」で、免疫強化物質を含む生理活性ペプチド、植物フラボノイドなどの食品成分がこれに該当します。乳酸菌発酵液は一種のバイオジェニックスです。

プロバイオティクスの効果はバイオジェニックスの効果である

 これまで、私たちがヨーグルトなどプロバイオティクスに含まれている乳酸菌の作用として認識してきた保健効果の多くは、生きた乳酸菌が腸内に到達して増殖するときの効果だと考えていたのではないでしょうか。しかし、実は、外から摂取した乳酸菌はほとんど増殖できるものでなく、棲みつくことはほとんどありません。
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図8
すると、もし生きた乳酸菌のみの効果を考えるとすると、プロバイオティクスの効果を説明することが出来ません。ここに、プロバイオティクスの効果は、乳酸菌が生きたまま腸に達し、腸内で増殖することによって発揮される効果ではなく、その菌体成分が直接腸管免疫系に働くときのバイオジェニックス効果を考慮に入れる必要があります( 図8)。
バイオジェニックスの働きが、プロバイオティクスやプレバイオティクスの働きと大きく異なるのは、後者が腸内フローラを改善させることで生体に間接的に働きかけるのに対して、前者では腸内フローラを改善させるだけでなく、腸管免疫を高めることによって生体に直接働きかける点にあるのです。プロバイオティクスやバイオジェニックスの乳酸菌は、生菌でも死菌でも、その菌体成分が腸管免疫系に働き、腸内悪玉菌に対する抗体産生を促進し、その結果、腸内ビフィズス菌が増加し、腸内フローラが改善されるとともに、生体機能調節(抗ストレス・食欲の改善)、生体防御(免疫賦活・抗アレルギー)、疾病予防(下痢・便秘・がん・高血圧・糖尿病・高脂血症などの予防)、老化抑制に働きます。その場合、生菌・死菌に関係なく、摂取する乳酸菌の菌数が多いほど、その効果は大きいのです。また、オリゴ糖などのプレバイオティクスは、既に述べたように、大腸内のビフィズス菌の増殖を促進し、同様に保健効果を発揮します。
 乳酸菌発酵液の一番の働きは免疫刺激作用です。すなわち、プロバイオティクス、バイオジェニックス、プレバイオティクスは、いずれも腸内のビフィズス菌を増やし、あるいは腸内悪玉菌を抑制し、その結果、免疫機能を高めるのです。なかでも、表1に示したようにバイオジェニックスの乳酸菌数は、プロバイオティクスの1000倍も多いので、保健効果を期待するときには、プロバイオティクスよりバイオジェニックスがはるかに有利です。


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